当会の形意拳は、河北派形意門第二代、劉奇蘭老先生の高徒であり、清朝末期の中国を代表する武人、張占魁(賽天覇・閃電手)、李存義(単刀李)の両大師の教えを一身に得た姜容樵老師が、終焉の地上海において、自らの武芸の集大成として伝えたものである。
若き日に、国民党張之江将嶺の要請に応じて河南、山西、河北など中国各地の「形意=心意(xin-yi)」古跡を踏査した折に収集した膨大な資料、口碑は、後に尚武叢書『形意母拳』『形意八式拳・雑式錘合編』『拳械教範』(黄梓介と共著)および『形意拳』(内部資料)として纏められ、斯界の金字塔的な著作として、今日に至るまで再版され、後学の資として供されている。(この他に未発表ではあるが『形意十二目』『百形拳』などの原稿も上梓され刊行を待つばかりであったという。※ 筆者未見)
また、南京国術館時代より心意六合八法中興、呉翼輝や、河南派心意六合門の宝鼎等と、「形意=心意(xin-yi)」という概念を接点としてに、一門を挙げて交流、研究を重ね、その功力はさらに融通無碍、本質的なものとなった。
自門の伝承に加え、江湖武林の交流と、国民党官人としての秘笈探索という文武両面の探求の結果、最晩年の師爺の武術観は「xin-yi」門の伝える身法理論を、中国武術のひとつの精華として捉えていたと考えられる。
当会の形意拳教程では、無極、三才式、五行勁(拳母)、十二形、八字功と続く練体法の段階的深化に伴い、内功二十式(単式訓練)相生相克、五行連環、鶏四把、八式、雑式という套路(稽古型)、相生相克などの(対練型)、五行刀、形意大槍などの(機械)を通じて、天然の内功を顕現させ、先師姜容樵の目指した「xin-yi」の奥妙に参入すべく鍛錬を重ねゆく。
当流は「形意=心意(xin-yi)」門に拘り続けた姜容樵の遺伝子を受ける、言わば形意門中の名流と言える。その河北派形意門独特の身法を、初歩から誤らずに学んでゆけるようにして行きたい。
当会代表自身、この深遠な形意門の練躰、戦術の要求するレベルを充分に満足させているかというと、残念ながら、未だ修行中の途上に居ると考えている。
そういう理由から、責任を持って教授できる初級の内容のみ公開し、それ以上(八式拳以降)の教伝については、当会に於いては、当分予定されないことをご了承願いたい。
※ 形意拳は、姜氏内家拳術班の中で、初歩的身法と対練の終了した門人に教授しています。